極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
「のどか様との結婚を一番望まれているのは、誰でもない社長本人です。それ以上に大切なことなんて、私には無いと思います」
掛けられた言葉に目を向けると、ルームミラーの中から神原さんが私を見つめていた。
「でも……」
「私は今まで、秘書として長く社長のそばでお仕えしてきましたが、のどか様と出逢われてからの社長は、まるで別人のように変わられました」
対角線上の後部座席に掛ける私にはわずかな横顔しか見えないけど、神原さんが微かにクスッと笑った気がする。
いつもキリッとしていて笑みも見たことがなかったから、気のせいかと凝視してしまう。
「別人て……」
「女性のことで悩まれる姿なんて初めてですし、それに……」
「……?」
「のどか様のことを話される社長、とても幸せそうな顔されるんですよ」
ルームミラーに見た神原さんは、やっぱり気のせいではなく優しい笑みを浮かべていた。
突然連れ去られて、行った先にも行動にも驚いたけれど、神原さんなりに私たちのことを心配してくれたとわかり、胸がほっこり温かくなる。
「神原さん……ありがとうございます」
静かにお礼の言葉を口にすると、神原さんは「私は何も」といつも通りの調子で返事をした。