極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


いつも穏やかにしっとりと話す悠太さんが、初めて感情を出したような声を出した。

驚いて真横に顔を向けると、悠太さんは真っ直ぐ前を見据えている。


「そうじゃ、ない……でも、私が行ったところで――」

「俺も、今から母さんに初めて逆らいます」

「え……?」

「兄さん見てたら……俺も、見習わないとって」


何かを決意したように悠太さんは言い放つ。

もう何が何だかわからないけど、一つだけ明らかなことは、お義母様はお見合いを突き進めようとしているということ。

そしてその相手は、たぶんこの間のクレア・ルミナスのご令嬢だろう。


「のどかさん……兄さんのこと、好きなんですよね?」


はじまりは、なんの感情も持たないと思っていた。

こんな状況になって、やっぱり他の方とお見合いし結婚することなったと言われれば、『そうですか、わかりました』とあっさり幕引きできただろう。

でも、今は……――。


「行ってください。ここの三階のレストランです」


ホテルのロータリーに乗り入れ、正面玄関の前で車を停車させた悠太さんは、詳しい場所が走り書きされたメモを差し出す。

考えるよりも先に身体が動いていた。


「ありがとう!」


やっぱり、好きだという気持ちは誤魔化せない。

その想いだけでエントランスを駆け抜けていった。

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