極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
「ありがとう、ございます……あっ」
自分のスーツのジャケットから名刺ケースを取り出そうとすると、園咲さんは「必要ないですよ」と私を止める。
え?と顔を上げると、笑みを滲ませる目を細めた。
「柏のどかさん。私はあなたを知っていますから」
「え……」
「結婚の申し出に来ているのに、名前も知らないわけないでしょう」
現実に引き戻されたような気分だった。
つい流されてしまいそうになっていたけど、とんでもない話の真っ最中だったことに我に帰る。
「あのっ、そのことなのですが、話が全く見えないというか、私はそんな話知りませんし――」
「そうですね。私が城社長に個人的にお願いに上がっていた話ですので……では、直接お願いさせていただきます」
そう言った園咲さんは不意に私の手を取る。
突然のことに驚いて息を呑んだ時、取られた手に園咲さんはもう片方の手も添えて、私の手を包み込んだ。
大きく温かい手にドキンと心臓が大きな音を立てて打ち鳴った。