イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「そいつに、触らないでください」
低く短い声。
誰が発した言葉が一瞬理解できなくてぱちぱちと目を瞬かせていると、川口さんが「へぇ」と目を細めて笑った。
「なんで佳奈ちゃんに触ると、窪田が怒るわけ?」
挑発するような視線を私の背後にいる拓海に向けながら、川口さんが私のほうへ身を寄せる。
一度は払い落とされた手をまたのばし、私の頬をするりとなでた。
一体これはなにごとなんだと、目の前にいる川口さんと背後にいる拓海の間でおろおろと目線を泳がせていると、川口さんに指であごをつままれた。
まるでよそ見をするなというように、まっすぐに川口さんの方を向かされ微笑みかけられる。
「佳奈ちゃんは、俺に触られても嫌じゃないよね?」
そう問われ、嫌じゃないけど決して嬉しくもありません、と言おうと私が口を開きかけた時、後ろからのびてきた腕に体を引き寄せられた。