イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「さっき届けてくれた名刺と一緒に注文した備品、まだ届いてないかなぁと思って」
「あ、はいっ。すぐに確認してみます!」

こくこくと、壊れたおもちゃみたいに高速で首を縦にふる。
その横で拓海は、不機嫌そうな表情で川口さんを見ていた。

「窪田もなにか佳奈ちゃんに用事あった?」

そう問われ、拓海の表情から険しさが抜ける。
なにごともなかったような涼しげな表情で「いえ」と首を横に振ると、営業部に入っていった。

いったいなんだったんだ。

拓海が何を考えてるのかまったく分からなくて、ぼうぜんとその背中を見送る。
拓海に掴まれた二の腕に、かすかに残る指の感触。
そこをなぞるようにブラウスの上からそっと触れてみた。
さっきからずっと、胸のドキドキが収まらない。

「佳奈ちゃん、実はかなり脈ありなんじゃないの?」
「脈ってなにがですか……?」

面白がるように笑う川口さんに、意味が分からず私は眉をひそめて首をかしげた。




 
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