イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
約束の金曜日。
年度末や総会準備などの特別な時期以外はほぼ定時で仕事を終える総務とは違い、いつも忙しい営業の拓海は残業らしく、先に家に入ってていいからと鍵を渡されてしまった。
手の中にある銀色の鍵を見下ろす。
本命の彼女がいるくせに、こんな気軽にほかの女に鍵を渡してしまっていいのか。
モテるくせに、危機管理能力低すぎない?
なんて思ったけど、そもそも最初から私なんか女としてカウントされてないのかと気づいて、ちょっと複雑な気分になる。
スーパーで買い物をして、ビニール袋を持って部屋に入った。
「おじゃましまーす……」
誰もいないとわかっているけど、一応小声で挨拶しながら靴を脱ぐ。
キッチンに入りとりあえず買ったものを冷蔵庫にしまいながら、ついつい中を物色してしまう。
普段から拓海は自炊しないんだろう。
いくつかの調味料と飲み物くらいしか入っていないがらんとした冷蔵庫。
彼女が遊びに来たときは、私みたいに食材を買ってきてここで拓海に料理を作ってあげるのかな……。
そんな想像をして、胸がずきずきと痛くなった。