イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「ただいま」
料理の支度がだいたい出来た頃、玄関の扉が開き拓海が帰ってきた。
「お、おかえりなさい」
緊張しながら声をかけると、ネクタイを緩めながら拓海が笑った。
「なんだよそのぎこちなさ。ロボットの物まねでもしてんのかよ」
「してないし!」
拓海はムッとして眉をひそめる私の横をすりぬけ、キッチンをのぞく。
「いい匂い。なに作ったの?」
まだ後片付けができてないキッチンは、いろんなもので溢れてる。
戦いの後が残るキッチンを覗かれるのはなんだか恥ずかしくて、その胸を必死に押し返した。
「ごはんの準備しておくから、とりあえず着替えてきて!」
全力でキッチンへの侵入を阻止しながら言うと、拓海がくすくすと肩を揺らしてうなずいた。
今日の料理は、母に教えてもらった基本の家庭料理だ。
『料理に慣れてないくせに、手のかかる酢豚を作るなんて無謀すぎる』と呆れられ、なるべくシンプルなものから始めなさいと教えられた。