イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
成長というか、前回が料理以下の代物だったから、どん底のマイナスからようやくゼロのスタート位置まで上がってきた感じだ。
それでも拓海のまんざらでもない様子に、ようやくほっと肩から力がぬける。
するとこちらに長い腕がのびてきた。
きょとんと目を瞬かせると、ぐりぐりと力任せに頭をなでられる。
「ちょ……、いたいよ!」
本当は痛くなんてないのに、くすぐったさと照れくささで首をすくめながら文句を言うと、そんな私の気持ちなんてお見通しなのか拓海が優しく笑った。
「頑張ったな」
その言葉に、じわりと頬が熱くなる。
胸のあたりからなにかが湧き上がってくるように、そわそわと落ち着かなくなる。
どうしていいのかわからなくて咄嗟にうつむくと、拓海は私の頭を撫でた手を下ろしまた箸を持つ。
私が作った料理を、拓海が食べてくれる。
そのことが、こんなにドキドキすることだと思わなかった。
本当はいつまでもその様子を見ていたかったけど、そんなことをしていたら不気味だと思われるだろうから、私も「いただきます」と手を合わせた。