イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

すると、拓海がきんぴらごぼうが入った小鉢を見て嬉しそうに笑った。

「このきんぴらごぼう、懐かしいな」
「そう?」
「お前んちのきんぴらごぼうって、細かく切った牛肉が入ってたなって思い出した」

そう言われ、自分の目の前にあるきんぴらごぼうを見下ろす。

ごぼうとニンジン。そして牛肉を炒め、父の酒の肴になるようにと輪切りの唐辛子を入れて少し辛めに仕上げたきんぴらごぼうは、母がよく作る我が家の定番だ。

幼い頃はこれが普通だと思ってたから、どうして学校の給食で出るきんぴらにはお肉が入ってないんだろうって不思議だった。

「俺、このきんぴらごぼうが好きだったんだよなぁ。引っ越してからずっと食べてなかったけど、久しぶりに食べたらやっぱり美味い」

そう言って私の作ったきんぴらごぼうを食べてくれる拓海に、胸がいっぱいになる。
隣同士で暮らしていた時は、こうやってよく一緒にご飯を食べたっけ。


 
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