イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「ど、どうしてキスなんてするの? 本命がいるからしないって、言ってたくせに……っ」

混乱して涙をこらえながら叫ぶと、拓海が不機嫌そうに舌打ちをする。

「本命のことなんて、忘れろよ」

低い声で吐き出された身勝手な言葉に、感情がたかぶって目が潤んでいく。

本命の彼女のことなんて、忘れられるわけがない。
だって、もし私がなんの抵抗もせず抱かれたって、拓海にとってはただの気まぐれでしかないんでしょう?

拓海には、ちゃんと彼女がいるんだから。
私のことなんて、好きでも何でもないんだから。

顔も知らない彼女と仲良くこの部屋ですごく拓海の姿を思い浮かべて、胸がつぶれるほど痛くなった。


「そんなの、忘れられるわけない……っ!!」

私がもがくと、腕がローテーブルにぶつかった。
ガチャンと大きな音がして、テーブルの上の食器が倒れる。

「わ……っ!!」

目を見開いた私の上に、わかめとネギのお味噌汁が降ってきた。




 

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