彼の甘い包囲網
帰り道。
何気無く立ち寄った駅前の本屋でファッション雑誌を手に取った。
待ち合わせなのか、真新しいスーツを着こんだ女性が二人、私が手にした女性誌と同じものを読んでいた。
長い髪をリボンバレッタで留めた女性が口を開いた。
「この対談の人、知ってる?」
ショートヘアに眼鏡をかけた女性が返事をする。
「え?
蜂谷グループ……蜂谷奏多……。
知らない、でもスッゴいイケメン!」
隣りから聞こえてきた声。
ドクン、と心臓が大きな音を立てる。
彼女達に気付かれないよう、慌ててページを繰る。
手が震えていた。
開いたページには、蜂谷グループと新しくオープン予定のホテルについての紹介が書かれていた。
アメリカ、ラスベガスに開発予定の大型商業施設に隣接するホテルだ。
そこには、普段とは違う奏多がいた。
ヒュッと小さく喉が鳴った。
ただの写真だとわかっているのに。
奏多の顔なんて見慣れている筈なのに。
正面を向いて柔らかく微笑んでいる奏多から目が離せなかった。
指でページの中の奏多に触れる。
温もりなんてないことはわかっている。
わかっているのに。
何故か手を伸ばさずにはいられなかった。
『楓』
私を呼ぶ、低くて甘い声。
私に触れる長い指。
深い焦げ茶色の綺麗な瞳。
思い出す度。
胸の中に表現できない気持ちが込み上げて溢れ出す。
泣きたいような笑いたいような、やるせないような焦燥感が胸を打つ。
何気無く立ち寄った駅前の本屋でファッション雑誌を手に取った。
待ち合わせなのか、真新しいスーツを着こんだ女性が二人、私が手にした女性誌と同じものを読んでいた。
長い髪をリボンバレッタで留めた女性が口を開いた。
「この対談の人、知ってる?」
ショートヘアに眼鏡をかけた女性が返事をする。
「え?
蜂谷グループ……蜂谷奏多……。
知らない、でもスッゴいイケメン!」
隣りから聞こえてきた声。
ドクン、と心臓が大きな音を立てる。
彼女達に気付かれないよう、慌ててページを繰る。
手が震えていた。
開いたページには、蜂谷グループと新しくオープン予定のホテルについての紹介が書かれていた。
アメリカ、ラスベガスに開発予定の大型商業施設に隣接するホテルだ。
そこには、普段とは違う奏多がいた。
ヒュッと小さく喉が鳴った。
ただの写真だとわかっているのに。
奏多の顔なんて見慣れている筈なのに。
正面を向いて柔らかく微笑んでいる奏多から目が離せなかった。
指でページの中の奏多に触れる。
温もりなんてないことはわかっている。
わかっているのに。
何故か手を伸ばさずにはいられなかった。
『楓』
私を呼ぶ、低くて甘い声。
私に触れる長い指。
深い焦げ茶色の綺麗な瞳。
思い出す度。
胸の中に表現できない気持ちが込み上げて溢れ出す。
泣きたいような笑いたいような、やるせないような焦燥感が胸を打つ。