彼の甘い包囲網
「私よ」

バーン、とドアが開いて綺麗な女性が部屋に入ってきた。

「千春さん!」

「おはよう、楓ちゃん。
気分はどう?」

「あ、頭痛が少し……」

「二日酔いかしら、それにしてはあんまりお酒臭くなかったけど……お酒に弱いのね。
朝食の準備をしたから一緒に食べましょ!
あ、着替えも持ってきたわ!」

細身のホワイトデニムにサーモンピンクのコットンセーターを着た千春さんが大きな紙袋を幾つも抱えながらニッコリ笑ってくれた。

美人は朝からとんでもなく美人だ。

「おい、千春!
何勝手に寝室に入ってきてるんだよ!」

「ふーん、入っちゃダメな不埒なことでもしてたわけ?
お酒に酔っ払って寝ちゃった楓ちゃんに?
最低の鬼畜ね、柊くんに言うわよ」

「してねえよ!」

「だったらいいでしょ?
アンタのことだから、着替えさせたのは俺だとか言って楓ちゃんを困らせてたんじゃないの?」

ぐ、と奏多が言葉に詰まる。

「……してたんだ。
悪趣味ね。
楓ちゃん、大丈夫よ。
楓ちゃんを着替えさせたのは私。
昨夜奏多に呼ばれて、ね」

「え!
す、すみません……ご迷惑を……」

夜遅くに呼び出して迷惑をかけてしまうだなんて。

本当に申し訳ないし、更にはこんなに素敵な女性に手入れの行き届いていない裸に近い身体を見られたと思うと、有り難いけれどそれはそれで落ち込む。

「全然よ。
ヤッパリ楓ちゃん、そのルームウェアよく似合っているわ!
可愛い!
良かったら貰ってね。
あと、今日のために新品の外出着も幾つか持ってきたからね」

「そんな、この服を貸していただいただけで……あの、本当にありがとうございました。
き、着替えも手伝っていただいて」

「そんなの気にしないで!
奏多はこの通り可愛げないし、楓ちゃんは妹みたいで本当に嬉しいの。
こんな腹黒い弟のお嫁さんはオススメしないけど、楓ちゃんと姉妹になれたら本当に嬉しいわ」
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