彼の甘い包囲網
「じゃあ、取り敢えず札幌に行くか」

泣き止まない私の髪をずっと撫でてくれていた奏多が唐突に言った。

「へっ?」

「お前のご両親に挨拶に行かなきゃいけないだろ」

当たり前のようにシレッと言い放つ。

憎らしいくらいに綺麗な笑顔。

驚きで涙が引っ込んだ。

「ちょ、ちょっと待って!
まさか今からじゃないよね?
幾ら今日が土曜日だからって……そもそも奏多、仕事は?」

「今日は休み」

イヤイヤ、そんな輝かしい笑顔で言われても!

絶対、強引に休みにしたでしょ……。

充希くんと兄の溜め息が聞こえてきそうだ。


「大丈夫。
俺に任せろ。
午後の便で行こう。
ご両親には、伝えてあるから」

「い、いつ伝えたのよ!」

「楓のシャワー中に」

恥ずかしすぎる……。

もう反論する気持ちになれない。

私、これから振り回される予感しかしない……。



「楓、愛してる」



見惚れるくらいに綺麗な笑顔で。

眉間に皺をよせる私に。

最愛の未来の旦那様は微笑んだ。



「私も愛してる」



初めてあなたに告げる。

吃驚して固まっている奏多。

そんなあなたにとびきりの微笑みを向けて。



どんなあなたもずっと愛してる。




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