彼の甘い包囲網
他の誰かに私が恋をしたことがあればもっと簡単に理解できたのだろうか。

そもそも私は奏多以外の男性に心惹かれることがあるのだろうか。

奏多が私に興味を失って、私に笑いかけてくれることがなくなっても、一途に奏多を好きなのだと、自信をもって言い切れる自分でないとダメなのではないかと思う。

こんなフラフラした私では奏多を傷つけてしまう。



どうして奏多がそこまで私に執着するのか、大事にしてくれるのかわからない。

それだけの価値が私にあるとは思えないのに。

贅沢で身勝手な悩みかもしれない。

だけどそれが今の私には一番の悩みだ。


「そこまで考えてるなら、それを直接蜂谷さんにありのままに伝えた方がいいんじゃない?
そもそも蜂谷さんの背景じゃなくて、そこに悩んでるところがスゴいけど」

「だよね、何か押し問答みたいに、婚姻届を書け、嫌だって言い合っていても前に進まないわけだし、ね?」

二人の意見に。

「……そうだよね」

半ば諦めのような気持ちで頷いた。
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