彼の甘い包囲網
「……奏多、私からも条件を出していい?」

ゆっくり瞬きをして、奏多を見つめた。

「……どんな?」

抑揚のない声。

「……卒業まで私からは必要最低限以外の連絡をしない。
奏多と基本的に連絡を取らない。
今みたいに会わない。
き、キスとか抱き締めたりとかするのも、無しだからね……!」



毅然と聞こえるように平静を装って言った。



奏多の表情が強張って。

無表情に変わる。



……その顔はズルい。

今言ったことを撤回しそうになる。



心の中で謝罪をして。

キリキリ痛む胸の鈍痛に気付かぬ振りをして、話を続ける。


「……奏多にきちんと返事をするために離れるの。
奏多と接していたらきっと私、また流されて自信をもてなくなるから一人で考えたいの。
ワガママだってわかってる、でも……」


言い淀む私に。

奏多は深い溜め息をひとつ吐いた。

苦しそうに悲しそうに表情が歪む。

綺麗に整った眉がひそめられて。

奏多は私をギュッと抱き寄せた。

フワリ、といつもの奏多の香りが色濃く漂う。


「……わかった……」


納得したのか、気持ちの読めない声。

私の髪に顔を押し付ける奏多の表情はわからない。


「けど、直接お前に連絡を取らなくても柊に聞いたり調べたりはするからな。
そこは譲らないからな!
それと全く会わないっていうのは却下」

「……何で?」

「……それを聞くか、フツー?
お前って本当に……」

拷問だな、と奏多がハアアッと大きな溜め息を吐いた。

「お前に何かあった時は有無を言わさず俺の傍に連れ戻すぞ」

「な、何かって何よ……」

「変な虫が寄ってくるとか、だよ」

ますます深く眉間に皺を寄せて奏多が不機嫌に言う。

「はあ?
そんなことあるわけ……」

身体を離そうとする私を逆に引き寄せて奏多が真剣な声で言う。

「……心配なんだよ。
それくらい、いい加減にわかれ」

切なさが滲む奏多の声に。

私はもがくのをやめて、奏多の胸に顔を預けた。
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