彼の甘い包囲網
柊兄は大学を卒業し、充希くんと共に蜂谷グループに就職した。
充希くんの就職は予想通りだったけれど、柊兄には驚いた。
奏多が俺を必要としたから、と柊兄は偉そうに言っていた。
ゆくゆくは充希くんと二人で、奏多の補佐役兼秘書として勤めるらしい。
奏多は今、専務という肩書きを一応持っているらしい。
まだ色々したいことがあるから肩書き、要らないんだけど、と奏多がよく零していると言う。
皆が新たなスタートを切った春。
私も新たな時間割りを作成し、ゼミの準備をしようと考えていた穏やかな夜。
遅くなる、と言われていた兄の夕御飯を用意して、後片付けをしていた。
ガチャガチャと玄関ドアを開け、慌ただしい足音が部屋に響いた。
「楓!」
「お帰り、お兄ちゃん。
あれ?
今日遅くなるって言ってなかった……」
「お前!
婚姻届って何の話だ!」
「……へ?」
走ってきたのか、兄のセットされていた筈の髪は乱れ、顔が赤くなっている。
言われた言葉に呆然とすると。
「柊。
いきなりすぎてワケわかんないから。
あ、久しぶり、楓ちゃん。
夜分にお邪魔します」
背後から落ち着いた様子の充希くんが顔をだした。
深いグレーのスーツ姿が新鮮だ。
「……充希くん、お久しぶり」
「楓!
答えろ!
お前、俺に何の相談もなく……!」
「だから、さっき言っただろ?
お前の妹が大学卒業したら貰うって」
最後に割り込んできた低い声。
その声に。
ドキン、と心臓が跳ねた。
サラサラの髪を掻きあげて、苦笑しながら部屋に入ってくる奏多。
奏多がいるだけで部屋の空気がガラリと変わる。
私に視線を移してフワ、と微笑む奏多。
何をするわけでもないのに、そこはかとない色香が漂う。
「お前に聞いてねえ!」
「……柊。
一応、奏多は上司」
「今は業務時間外だっ!
俺は楓に聞いてる!」
「いや、僕達の仕事って、ある意味二十四時間仕様だからね、奏多は上司で友達なんだよ」
「……いや、それはそれだろ」
充希くんの就職は予想通りだったけれど、柊兄には驚いた。
奏多が俺を必要としたから、と柊兄は偉そうに言っていた。
ゆくゆくは充希くんと二人で、奏多の補佐役兼秘書として勤めるらしい。
奏多は今、専務という肩書きを一応持っているらしい。
まだ色々したいことがあるから肩書き、要らないんだけど、と奏多がよく零していると言う。
皆が新たなスタートを切った春。
私も新たな時間割りを作成し、ゼミの準備をしようと考えていた穏やかな夜。
遅くなる、と言われていた兄の夕御飯を用意して、後片付けをしていた。
ガチャガチャと玄関ドアを開け、慌ただしい足音が部屋に響いた。
「楓!」
「お帰り、お兄ちゃん。
あれ?
今日遅くなるって言ってなかった……」
「お前!
婚姻届って何の話だ!」
「……へ?」
走ってきたのか、兄のセットされていた筈の髪は乱れ、顔が赤くなっている。
言われた言葉に呆然とすると。
「柊。
いきなりすぎてワケわかんないから。
あ、久しぶり、楓ちゃん。
夜分にお邪魔します」
背後から落ち着いた様子の充希くんが顔をだした。
深いグレーのスーツ姿が新鮮だ。
「……充希くん、お久しぶり」
「楓!
答えろ!
お前、俺に何の相談もなく……!」
「だから、さっき言っただろ?
お前の妹が大学卒業したら貰うって」
最後に割り込んできた低い声。
その声に。
ドキン、と心臓が跳ねた。
サラサラの髪を掻きあげて、苦笑しながら部屋に入ってくる奏多。
奏多がいるだけで部屋の空気がガラリと変わる。
私に視線を移してフワ、と微笑む奏多。
何をするわけでもないのに、そこはかとない色香が漂う。
「お前に聞いてねえ!」
「……柊。
一応、奏多は上司」
「今は業務時間外だっ!
俺は楓に聞いてる!」
「いや、僕達の仕事って、ある意味二十四時間仕様だからね、奏多は上司で友達なんだよ」
「……いや、それはそれだろ」