彼の甘い包囲網
くだらない話を延々続ける三人に。
いち早く私が冷静さを取り戻した。
「……もうっ、ちょっと三人とも黙って!
お兄ちゃん!
奏多に何を、どう聞いたの!」
ぴたり、と男子三人の会話が止まる。
柊兄が憮然とした態度で口を開く。
「奏多がお前を嫁に貰うって。
婚姻届を預かってるって」
……頭が痛い。
何でこのタイミング。
両親にも話してないし、兄に話すって聞いていないのに!
苛々が募ってくる。
ギリギリ歯を噛み締めながら、奏多を睨み付ける。
奏多はそんな私の様子を予想していたのか、妖艶な笑みを浮かべている。
充希くんは我関せずといった表情。
「……奏多」
「ン?」
「ン、じゃないわよ!
何を勝手にいきなり、ワケわかんないことして……!
お、お兄ちゃん、これには理由があってね……」
奏多を睨み付けつつ、兄に誤解を与えないように婚姻届についての経緯を説明する。
今まで一応は話しておいた方がいいかなあとは頭の片隅で考えながらも、忙しさや日々に埋もれて適当に流してきてしまった自分を悔やむ。
奏多のことだから、色々省略して兄に伝えたのだろう。
「……そういうわけだから、心配しないで?」
無理矢理笑みを貼り付けて、締め括ろうとしたのに、充希くんが口を挟んできた。
「でも合意に基づいた婚姻届ってことには変わらないよね?
っていうか既に記入は終わっているんだよね?」
「ああ。
だから、楓は俺の婚約者だな」
奏多が満足そうに綺麗な笑顔で頷く。
「ええっ?」
「お前いきなり何、言ってんだ!」
噛みつく柊兄。
「これ証拠写真」
スマートフォンを操作して画像を引っ張り出す奏多に。
私は呆れて言葉が出ない。
爆弾発言をした奏多は絶対にわざとだ。
「なっ、何だ、これ!」
スマートフォンの画像を見る兄の手が微かに震えている。
「だから婚姻届」
「違う!
何でお前と楓の名前が書いてあるんだ!」
口をパクパクさせて真っ青な顔をしている柊兄とは対照的に。
秀麗な顔立ちに魅力的な笑みを存分に浮かべて奏多は返事をする。
「俺と楓の婚姻届だからに決まってるだろ」
悪びれもせずシレッと言い放つ奏多。
「……お兄ちゃんっ!
何処に電話しようとしてるの!」
すかさずスマートフォンを取り上げた兄の顔は表情が抜け落ちている。
「親父とお袋に決まってるだろ!」
「や、やめてよっ、もう奏多、お兄ちゃんを止めて!」
それから柊兄に、私に睨まれた奏多が再度、渋々状況を説明した。
「楓、奏多が勝手に婚姻届を出さないように俺が見張っているからな」
ジトッと奏多に恨みがましい視線を向けながら兄は笑う。
私の頭を撫でる兄は小さい頃から変わらない『お兄ちゃん』だ。
いち早く私が冷静さを取り戻した。
「……もうっ、ちょっと三人とも黙って!
お兄ちゃん!
奏多に何を、どう聞いたの!」
ぴたり、と男子三人の会話が止まる。
柊兄が憮然とした態度で口を開く。
「奏多がお前を嫁に貰うって。
婚姻届を預かってるって」
……頭が痛い。
何でこのタイミング。
両親にも話してないし、兄に話すって聞いていないのに!
苛々が募ってくる。
ギリギリ歯を噛み締めながら、奏多を睨み付ける。
奏多はそんな私の様子を予想していたのか、妖艶な笑みを浮かべている。
充希くんは我関せずといった表情。
「……奏多」
「ン?」
「ン、じゃないわよ!
何を勝手にいきなり、ワケわかんないことして……!
お、お兄ちゃん、これには理由があってね……」
奏多を睨み付けつつ、兄に誤解を与えないように婚姻届についての経緯を説明する。
今まで一応は話しておいた方がいいかなあとは頭の片隅で考えながらも、忙しさや日々に埋もれて適当に流してきてしまった自分を悔やむ。
奏多のことだから、色々省略して兄に伝えたのだろう。
「……そういうわけだから、心配しないで?」
無理矢理笑みを貼り付けて、締め括ろうとしたのに、充希くんが口を挟んできた。
「でも合意に基づいた婚姻届ってことには変わらないよね?
っていうか既に記入は終わっているんだよね?」
「ああ。
だから、楓は俺の婚約者だな」
奏多が満足そうに綺麗な笑顔で頷く。
「ええっ?」
「お前いきなり何、言ってんだ!」
噛みつく柊兄。
「これ証拠写真」
スマートフォンを操作して画像を引っ張り出す奏多に。
私は呆れて言葉が出ない。
爆弾発言をした奏多は絶対にわざとだ。
「なっ、何だ、これ!」
スマートフォンの画像を見る兄の手が微かに震えている。
「だから婚姻届」
「違う!
何でお前と楓の名前が書いてあるんだ!」
口をパクパクさせて真っ青な顔をしている柊兄とは対照的に。
秀麗な顔立ちに魅力的な笑みを存分に浮かべて奏多は返事をする。
「俺と楓の婚姻届だからに決まってるだろ」
悪びれもせずシレッと言い放つ奏多。
「……お兄ちゃんっ!
何処に電話しようとしてるの!」
すかさずスマートフォンを取り上げた兄の顔は表情が抜け落ちている。
「親父とお袋に決まってるだろ!」
「や、やめてよっ、もう奏多、お兄ちゃんを止めて!」
それから柊兄に、私に睨まれた奏多が再度、渋々状況を説明した。
「楓、奏多が勝手に婚姻届を出さないように俺が見張っているからな」
ジトッと奏多に恨みがましい視線を向けながら兄は笑う。
私の頭を撫でる兄は小さい頃から変わらない『お兄ちゃん』だ。