放課後○○倶楽部
「意味が分からない小説だな、これ」

　ため息混じりに呟いて本をテーブルに戻し、背伸びを一つ。凝り固まった筋肉が悲鳴を上げているが、これが結構気持ちよかったりする。

　……それにしても、誰も来ない。

　入り口の方へ目をやったが廊下には人通りはなく、静かで寂しさが身にしみてくる。最初来たときは誰も来てないと思ったがそのうち来るだろうと待っていたが誰一人として来る気配もなく、仕方なくテーブルの上にあった本に手を伸ばしたのだが……これが失敗。頭が痛くなってしまった。


　開け放たれた窓から差し込む午後の日差しは六月にしては夏の陽気をたっぷりと含んでおり、吹き込んでくる風は壊れたエアコンのように凶暴な熱気で俺を茹で上げようとしているようだった。

　蒸し風呂だね……ここは。しかも、こんなところで待ちぼうけって酷くないだろうか？

　現在、俺がいる場所を的確に説明するなら、校門を入って来ると見えるのが第一校舎、そのうしろに第二校舎がある。

　そして、三棟並んだ校舎の一番奥にある『文化部活動棟』という運動部系以外の部活ばかりが集まった第三校舎にいるわけだ。

　ちなみに四階にある部室なので遮るものが何もなく、西日が容赦なく当たって夏は暑くて息苦しくて、冬は霜焼けが出来て凍えるほど寒い。

　できれば逆だと嬉しいのだが、六畳一間のボロアパートよろしくって感じをしたプレパブ造りの内装をしているので、気密性には期待は出来ない。ここが我が屋の部屋だとしたら親に懇願してエアコンでも付けてもらうところだが、生憎そのようなわがままが通用するわけではないので諦めるとするか。

　それにしても、今日も活動すると言うのでやってきたのに誰も来ないとはどういう了見だろうか？


　……はあ、暇だ。


　盛大にため息を吐いて立ち上がり、珈琲でも入れようかと思った矢先――
「ボンジョルノ、ともちゃん」
　気色悪い声が聞こえ、背中を悪寒が走り抜けた。
< 2 / 161 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop