放課後○○倶楽部
「……遅いですよ、部長」
「いやあ、ごめんね。ちょっとそこで素敵な女子生徒に道を尋ねられたから、案内して来たら遅れたんだよ」
「…………そうですか。それで、どこまで案内したんですか?」
「駅前のケーキ屋さんだよ」

 この学園――七曜学園(ななようがくえん)から徒歩一〇分。

 放課後になってすでに二時間、俺が待ちぼうけを受けた時間は一時間と五十分……往復二〇分しか掛からない場所でこれほどまでに時間が掛かったのは大体想像ついてしまう自分が嫌だ。

「一緒にケーキを食べましたね。ついで、あわよくば女の子も一緒に食べようとか考えていたでしょ? この変態送り狼が」
「わあ、すごい。さすがはともちゃんだね……まさしくその通りだよ」

 棒読み気味に感情を押し殺して言った俺にまったく感心も示さず、能天気に拍手などしている変態男。少しは自粛しようって気がないのかね、この人は。

 この変態丸出し(いや、実際に変態だが)の男――名を海藤翔(かいどうしょう)と言い、三年の先輩で一応は俺の入っているクラブの部長をしている偉い人なのだが、人望は限りなく……いや、まったくない。

 サラサラの黒髪に切れ長の瞳、すらっとした男前な鼻に同じく男前な唇。パーフェクトに甘いルックスに巧みな話術で女子には絶大な人気があるのだが、一つだけ困った癖がある。

「でもね……僕が胸を触ったら、『あんっ』とか言いながらも思いっきりビンタしたんだよ。しかも往復ビンタだよ? 酷いと思わない? ねえ、ねえ」
「自業自得です」

 この天然年中発情オープンスケベな性格のせいで、今まで特定の彼女が出来た事がないのだ。

 変態部長の困った癖――それは女子に触ってないと暴れ出してしまうというものだった。

 まあ、一日くらいなら平気なのだが、二日目になると徐々に目付きが危なくなり、三日目には逝ってしまう。

 色んな意味で逝ってしまうから、それを止めるのも大変だったりするわけだ。しかも、その役目が何故かいつも俺に廻ってくるので迷惑な事極まりない。

 しかし、どうしていつも俺なのだろうか、と毎回考えているが答えが出てこない難問である。
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