放課後○○倶楽部
「本当に懲りないヤツだね……毎回、智樹のお仕置きフルコースを喰らってのに」

 呆れた声を上げながら律子ちゃんの淹れた珈琲をおいしそうに飲んでいる和音さんはお皿に載ったクッキーを食べていた。

「おっ……これ、おいしい。この口の中で解けるような食感は中々のものだな」
「それは私が焼いたんですよ。でも、クッキーなんて焼くのは久しぶりでうまく出来ている心配だったんですけど」
「ほう、律子は何でも出来るんだな。これなら智樹と結婚出来るなあ」
「え? え、え……あ、あの」

 真面目に受け取った律子ちゃんが慌てふためく姿を見ていた和音さんだったが、とうとう我慢出来なくなったようで声を上げて笑い出していた。

「和音さん、あまり律子ちゃんをからかって遊ばないくださいよ」
「おやおや、優しい事で」
「和音さんもフルコース食べますか? 今なら特別にデザートも付けますよ」

 手を振って遠慮する和音さんに気絶寸前の部長を差し出して忠告を入れたが、苦笑いを浮かべて「さすがにやり過ぎじゃないか?」と指摘を受けてしまった。しかし、部長の顔を見ると血が騒ぐというか、踊るというか……つい、力が入ってしまうので仕方ないと思うのだが。

「あだだっ……ううっ。ともちゃん、ちょっとは手加減してよ」

 顔を擦って痛そうに眉をしかめる部長は俺に抗議の視線を遠慮なく向けているが、俺はそれを軽く受け流して無視をする。

「ライオンはウサギを狩るのにも全力でいきますので、俺も部長を粛清するときは全力で殺(や)ります」
「なんか、物騒な響きのする言葉が聞こえたけど、僕は死にたくないよー」

 喚き散らかし部室の中を暴れ始めた部長だったが、今度は和音さんに捕まっていた。


 出た……必殺、ピンクボム。


 敵の背後に音もなく忍び寄って立ち、一気に首を締め上げる和音さんの必殺技の一つだ。しかし、この技は男子には絶大な人気を誇っている。
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