放課後○○倶楽部
「で……今回は何をしているのですか?」
「いや、ちょっと電話があったから来てみたら、女の子達に囲まれて……気付いたら、ご覧の通りさ」

 まったく自分の立場を分かっていないね、この人は。

「いいですか、変態。いや、ド変態」
「……もう、部長でも何でもないただの変態なんだね、ぐすん」
「それじゃ、馬鹿。いいですか……今の馬鹿には覗きの容疑がかけられているのですよ? それをノコノコと女子更衣室に入って緊縛変態プレイをしていては、まったくもって疑いの余地がない完璧な証拠を作り上げているのも同じ事です」

 すっぱり言い切ってやると変態部長は項垂れて身体を震わせていた。少し言い過ぎたかなと思い、声を掛けようとしたが――
「ともちゃん、もっと言ってーっ。僕、新しい快感に目覚めちゃったかもっ」
 目をキラキラと輝かせて俺を見つめていた。

 生け捕りにされた魚のように暴れ回る部長に律子ちゃんはドン引き。さすがの俺も言葉を失ってしばし呆然と見つめている事しか出来なかった。

「律子ちゃん、帰ろう」
「え、あ……い、いいんですか?」
「ここでは何も見ていない。ここでは誰にも会っていない。それと……ここで見た事は一〇秒以内で忘れないと地獄を見るよ、律子ちゃん」
「ひゃ、ひゃいいっ」

 俺は威嚇するように鋭い目を律子ちゃんに向け、怯えて震える律子ちゃんの手を掴んで更衣室の出口へと向かっていた。

「ともちゃん、待ってよーっ。もっと僕をいじめておくれよお」

 うしろで幻聴が聞こえているのだけど、振り返っては駄目だ。そうすれば俺は駄目になる……あの変態部長に新しい変態パワーを与えてパワーアップさせた馬鹿に一泡吹かせた心境なのだが、どこの誰だか分からないし。

 今日は帰りにゲーセンにでも寄って、このモヤモヤするストレスをパンチングマシーンで発散しよう。


「とーもーちゃあーんっ」


 聞こえてくる変態の叫びを聞きながら、俺に腕を掴まれて「もう忘れましたからっ」と必死で訴えて泣いている律子ちゃんを連れ、俺は女子更衣室から出て鍵を掛けた。

 部長……地獄に行けば、縄でも針でもよりどりみどりですよ。
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