放課後○○倶楽部
「そんなわけで僕を慰めてよお、ともちゅあーん」
「俺にそんな趣味はないです」
「その可愛らしいキュートな笑顔で僕を癒してえ」

 唇を尖らせ、目に涙を浮かべて、如何にも惨めな男を演じて俺に駆けてくる変態男をヒラリと交わし、弁慶の泣き所に渾身の一撃とばかりに足払いを一つ。

「へぶしっ」
「俺は男です。こんな顔ですが、男に抱きつかれる趣味はありません」

 床に顔面からダイナミックにダイブした部長はもんどり打っていたが、痛みに耐えながら丸まって同情を誘うように俺を見上げていた。しかし、同情する気がまったく起きないのは日頃の行いが悪いせいだろう。

 多分、一番の被害者は俺だろう……。

 こんなわけの分からないクラブに何も知らない純真無垢(自分で言って気持ち悪いが)な一年生だった俺を引き込んで何をするわけでもなく、一年以上も青春を無駄に過ごさせたのだからある意味とんでもない人である。

 俺の顔が好きだった子に似ているとか、わけの分からない口説き文句(?)を言ったあの頃の部長は今よりは人間味溢れる素敵な人だったのに、一年でこうも変態っぷりが上がるとは予想外だった。

「男じゃなければいいのか? 智樹」

 と、そこに突如背後から聞こえてきた声と肩に掛かる重み。

「まあ、そうですけど…………それでも、節度ってものがありますよ」

 決して背後霊の類(たぐい)ではないのだが、肩に掛かる柔らかいものは重量感バッチリである。

「ほれ、お前の大好きな巨乳ちゃんだぞ」

 楽しそうに声を上げ、俺の頬に膨らみを押し付けてくるが、女としての恥じらいって言うのはないのだろうか?

「別に好きでも嫌いでもありませんよ。それより、重いので退けてくれませんか?」
「相変わらず面白い反応をするヤツだな、智樹は」

 ケラケラと笑いながら俺の前に回りこんで来た女子生徒。

 恰好だけは女の子で中身は俺より男らしいから膨らみを押し付けても恥じらいがないのだろう。

「遅刻ですよ、副部長」
「いや、すまん。ちょっとそこで女の子に捉まって道案内を――」
「それ、部長も言ってました」

 と、床でぐずっている変態を指差す。
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