放課後○○倶楽部
 放課後になったら特に用もないのに部室に来るのは毎日の日課である。

 今日もいつものように部室へと足を運び、扉を開けて中に入ると和音さんが頭を抱えてテーブルに肘を付いている姿が目に入っていた。

「……和音さん、人生に迷いましたか?」
「なんでだよ」
「いえ、珍しく考え事なんてしますから……てっきり、自分の幸先の悪い将来を悲観しているのかと」
「アホ。そうじゃなくて――これだよ、これ」

 呆れたように俺を一瞥して、またテーブルへ視線を戻した和音さん。だが、すぐに吐き捨てるように言葉を紡ぎ、手に持っていた紙を丸めて俺に投げて寄越して来た。

 かなりご立腹の様子だが何が書かれているのだろうか? 大変興味がありますのでちょっと拝読……。

「…………馬鹿、ですか? これ」
「アホだろ、それ? 私達にどうしろっていうんだよ……あいつは」

 俺と和音さんは顔を見合わせてため息を吐き、紙に書かれた文章を読んで俺は項垂れていた。


 ――妹達がたくさん行くから、よろしくね。


 何を伝えたのかまったく分からないが、最後に変態部長の名前が書いてあったのには悲しくもないのに涙が出そうになった。

「……まったく、部長は何を考えているのか」
「まあ、考えても仕方ないから私は楽しむ事にした。暇潰しには丁度いいし、からかって遊んでやるとするかね」

 楽しそうに声を上げる和音さんは立ち上がってテーブルを動かし始めていた。


 ……面倒だな。


 俺は手に持った紙を丸めてゴミ箱に投げ捨てたところに――
「お邪魔します! お兄ちゃん、お姉ちゃんっ」
 そんな声がいきなり部室内に響き渡り、スモークが辺り一面を覆っていた。
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