放課後○○倶楽部
「生きてるから心配しないで、ねっ? 俺は大丈夫だし、これはママッキーさんの発明品だから」
「そ、そうなんですかあ……び、びっくりしましたよ」

 大きく息を吸い込んで胸を撫で下ろしていく律子ちゃんは、落ち着きを取り戻して恥かしそうに頬を赤く染めていた。まあ、律子ちゃんらしい可愛い勘違いだと思うのだが、さすがに首が取れて走り回っていたら怪奇現象以外の何ものでもないと思う。

「でも、これは何ですか?」
「これはさっきも言ったけど、ママッキーさんの発明品で俺の顔に似せたラジコンだよ」
「…………欲しい、です」

 小さく聞いてはいけない言葉を呟く律子ちゃんを無視したい気分だったが、とりあえず聞き流して俺は律子ちゃんを立たせた。が、目を輝かせてラジコンを見つめる律子ちゃんはおもちゃを前にした子供のように俺の顔とラジコンに乗った俺の顔(言っていてややこしい)を交互に見比べていた。

「これは売り物ではありません」
「そうなんですか……一万円くらいなら買ったのに」

 買わなくていいから。

「あ、あの、私も遊んでいいですかっ?」
「いいけど、壊さないようにね」
「はいっ」

 嬉しそうにテーブルの上にあった某有名メーカーが一昔前に出した以下省略のコントローラを握りしめて、恐々と操作していく律子ちゃん。俺はそれを横目に珈琲でも淹れようと立ち上がったが、うしろから車に轢かれたような悲鳴が聞こえてきたが無視をした。


 ……そう言えば、あのまま寝てたな。


 多分床に寝転がっていた変態部長の顔面やら身体をラジコンが轢いたのだろうけど、面倒なのでそのまま放置する事にした。

 現にうしろで平謝りしている律子ちゃんの声が聞こえているが――
「部長……気絶したフリしてパンツは覗かない方がいいですよ」
 俺はとりあえずお決まりのツッコミをいれる事を忘れなかった。
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