放課後○○倶楽部
「あっ、今日はお二人共早いですね。ところで、今日は何を――きゃあっ」

 そんな部室にいつものように少し天然が入った声の主がやってきたが、一瞬の間があってから部室の壁を揺らし、校舎を破壊しそうな大絶叫が響き渡っていた。

「うひょー……すごいな。り……りっちゃん、大丈夫?」
「あ、ああっ……ふ、伏峰先輩がっ…………伏峰先輩の首があ、わああんっ」

 振り返った先にいたのは間抜け面を引っ提げてオロオロとしている変態部長と、それに負けないくらいの間抜け面を引っ提げて床に座り込んでいた律子ちゃんの姿があった。


 ……まあ、声で分かったけどね。


 で、俺が一人で思考を巡らせている間、歯医者で誉められそうなくらいに大きな口を開けていた律子ちゃんだったが、ご近所迷惑なくらいの大きな声で泣き始めてしまった。

「律子ちゃん、落ち着いて……ねっ」
「ううっ、は、はい……って、ふああ!」

 泣き喚く律子ちゃんを宥めないと隣の部にも迷惑だと思って近寄って頭を撫でていたが、一呼吸ほど間を開けて俺の顔を真っ直ぐに見つめ――
「ふ、伏峰先輩の幽霊! オバケーっ」
 器用に後転しながら壁にぶつかっていた。


 ……おーいっ、パンツが丸見えだぞ。


 隣で律子ちゃんに駆け寄って行こうとする鼻息が荒い変態部長の襟首を掴み、足払いをして鳩尾に肘鉄を入れる。

 一連の動作を流れるようにこなしてこそ一人前の柔術家であるが、俺は柔術は習ってないのでテレビなどで見たものを真似ただけなのだが、思いのほかうまくいったので俺自身が驚いている。

 さすがにやり過ぎたかと思ったが、生きているので問題ないだろう。それよりも律子ちゃんのパカパカ丸見えショーをどうしようかと悩んでいたが、律子ちゃんは思いのほか早く復活した。

 聞いてみると理由は可愛いもので、俺の首が取れて一人で動いていると思ったらしい。
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