俺様外科医に求婚されました
「昨日は母が本当にすみませんでした。小春ちゃん、本当にごめんね」
翌朝。一階のリビングに伯父さん達三人と母が揃ったタイミングで、私は改めて謝罪の言葉を口にした。
「いいんだよ理香子ちゃん。姉ちゃんも悪気があってやったわけじゃないんだし」
伯父さんはそう言ってくれた。
「あら、悪気がないからって小春のお財布を勝手に持っていくのはどうかと思いますけど」
伯母さんは納得いかない表情で伯父さんをジロリと見ていた。
「や、私は別にいいんだけど。いいんだけどさ…ぶっちゃけ部屋にはもう入ってほしくないんだよね」
小春ちゃんは言いにくそうに、そう口にした。
「化粧品入れてるボックスの中もグチャグチャになってたり、使ったんだろうなって痕跡が残ってたり…そういうのはちょっと…嫌なんだ」
「そんなこともあったの?それは確かに嫌よね…」
伯母さんはそう言うと、母に向かって言う。
「小春の部屋にはもう入らないでくださいね。あと、もう勝手に物を触ったりもしないで。わかった?お姉さん」
すると母は不思議そうな顔で首をかしげて。
「もう仕事に行かないと。遅刻しちゃうわ」
そんなことを言った。
言葉のキャッチボールがうまくいかない。
仕事なんてとっくに辞めているのに、遅刻するだなんてありもしないことを口にする。
「はぁっ…嫌んなっちゃうわ。会話も成り立たないなんて」
伯母さんはそう言うと、そそくさとキッチンに入って行った。
伯父さんは気まずそうに新聞を読み始めた。
小春ちゃんは朝ごはんはもういいと、大学に行ってしまった。
テレビの音だけがする静かなリビングに、居心地の悪い空気だけが漂う。
「お母さん、小春ちゃんの部屋にはもう入らないで。あと、私達の部屋にある物以外は触っちゃダメだよ?わかった?」
「どうしたの?理香子。そんな怖い顔して」
「えっ…」
母に言われて、ハッとした。
怖い顔って。私…そんな顔でお母さんのことを見ていたの?
心がズシンと、重い何かにつぶされたようだった。
私も、伯母さんや小春ちゃん達と同じように、一瞬でも母のことをそんな顔で見てしまっていたのだろうか。
「ご…ごめんね…。仕事、行ってきます」
母からサッと目をそらし、私はすぐにリビングを飛び出した。
急いで靴を履いて、外に出た。
澄み渡る空を見上げながら、唇を噛みしめる。
頭上に広がる青空は、清々しいくらい綺麗だった。
なんだか泣きたくなった。
私の心は、綺麗じゃない。
良い娘じゃない。大切なはずの母のことを、優しい目で見てあげられなくなっている。
…最低だ。