俺様外科医に求婚されました



厳しかった寒さも和らぎ、ここ数日は心地よい風が吹くようになった。

凍えるような冬から、気が付けばまた一つ季節は移り変わり、病院に向かう通勤路にある桜の木にはたくさんの蕾が芽吹いている。


もう、春なんだな。

桜の木を見ながらふと立ち止まった私は、青く晴れ渡る空を見上げ、スーッと息を吸い込んだ。

春の訪れを感じさせてくれる穏やかな空気は、なんだか心まで穏やかにしてくれるような気がする。


「さっ、今日も頑張らなきゃ」


ポツリと呟き、私は再び歩き出す。

すると病院へ向かっている途中にカバンの中で携帯が鳴った。

画面を確認すると、芹那からメッセージが届いていた。
芹那というのは小野さんのことだ。


‘‘おはよう!理香子もう仕事?’’


それを見て、私はすぐに‘‘おはよう、もうすぐ病院に着くところ’’と返信する。


再会してからというもの、私達は頻繁に連絡を取り合うようになり、あれからすでに三回食事に行った。

結婚したら野々原という姓になる小野さんが、いいきっかけだからお互いを名前で呼び合おうと言い出したこともあり、つい先日からは私は芹那、芹那は理香子と呼ぶようになっていた。


‘‘そっか、わかった。また仕事終わった頃連絡する。それから、ごめんね。’’


ごめんねって何だ?

返信されたメッセージを確認した私は不思議に思いながらも病院に着くといつも通り更衣室に向かった。


< 242 / 250 >

この作品をシェア

pagetop