俺様外科医に求婚されました
これは、夢だろうか。
真っ白なドクターコートを着たその人は、立ち止まった私を気にも留めず、どんどん距離を詰めてくる。
動揺した私は思わず踵を返し、今歩いて来たばかりの廊下を急いで引き返した。
だけど…
「どこの科の看護師だ」
後ろから聞こえたその声で、再び足が止まった。
近付いてくる足音が、私のすぐ後ろで止まる。
すると次の瞬間、トンッと肩を叩かれた私は驚きのあまり動けなくなり、そんな私の前に回りこんできた彼は、動揺する私を見下ろして口を開いた。
「初めまして」
「えっ…」
やっぱり、これは夢なの?
「今日からこの病院の脳血管科で働くことになった、大和諒太です。キミは、何科の看護師?」
全く状況が理解できない私は冷静になれと自分に言い聞かせる。
「あの、何を、してるんですか」
「何って?あぁ、言い忘れたね。32歳、ちなみに独身、彼女募集中」
」
「だからそうじゃなくて。どうしてこの病院に?だいたい初めましてって何なんですか」
「え?だって初めましてだろう。青葉総合病院の医師と看護師として会ったのは」
爽やかな笑顔でしれっと言い放つ諒太の姿は、あの頃と変わらない。
でも五年という月日は、諒太を大人の男に変えたような気がした。
スタイルの良さは相変わらずだけど、鍛えているのかドクターコートを着ていても体つきが変わったことがわかるし、首筋にはただならぬ色気が溢れている。