俺様外科医に求婚されました
「ふーん。あなたが諒太先生のお気に入りっていう看護助手なんだ」
第一診察室の奥で、腰に手を当てながら目の前に立った吉田さんという看護師は、私が挨拶をした直後そう言いながら私のことを上から下までジーッと見てきた。
「どこがいいんだか私にはサッパリわからない」
吉田さんは嫌味っぽく私を見つめ、さらに続ける。
「歳は?」
「えっと…23です」
「なかなか若いのね」
年齢を伝えると、吉田さんは気怠そうに息を吐いた。
推定年齢は、30歳くらいだろうか。
20代だとしても、後半の後半あたりが予想ラインかな。
気がキツそうではあるけれど、見た目はなかなか綺麗な人だった。
「結局、若さには勝てないってことなのかしらね」
「えっ?」
「だって、おかしいじゃない。あなたと私じゃどう考えても私の方がいいに決まってるのに、ちょっと私の方が年上ってだけで諒太先生は全く興味ないって感じだし、何度誘ってもつれないし」
「…はぁ」
「なのに、噂のお気に入りを異動させてきたかと思ったら、若いだけが取り柄の小娘って。変よ、変」
吉田さんはそう言うと、ジーッと私の目を見てさらに口を開く。
「ったく、どんな色仕掛けで迫ったのかしら」
「いっ、色仕掛けなんて!そんなことしてません…」
「じゃあ何でかしらね?諒太先生が一端の看護助手にここまでこだわるなんて。まぁいいわ、そんなことよりも今は仕事よ仕事」
そんなことよりもって、話をふってきたのは吉田さんの方なんだけどな。
「とりあえず私が戻るまで、これに目を通しておいて」
バインダーを手にした吉田さんはそれを私にサッと手渡すと、カーテンの向こうへとさっさといってしまった。