たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
あまり直接的なことは話すべきではないと思ったため、遠回しにそう質問してみる。


……だけど、桜井さんは。


「え、何、どういうこと? 私、遠回しな表現嫌いだから、はっきり聞いてくれる?」

と、微笑みながらも強めの口調で返される。

う。部長だけでなく桜井さんにまで”はっきり言え”と言われてしまった。


「相談したいことがあるんでしょう? ここで聞いたことは絶対に内緒にするし、何でも話していいのよ?」

その言葉に、ほっと安心する。
内緒にするからと言われたからといって部長のプライベートなことを話していい訳じゃないけれど……もし先生が部長のことを誤解しているなら早く何とかしたい。でも、私だけの力じゃどうにもならないから……


「実は……」


私は桜井さんに例の件について話した。



「なるほどねー。薫くんがそんなことを……」

桜井さんは顎に手をあてて頷いてみせる。


「もちろん、先生……薫さんが言っていることが真実なのかもしれませんが、私にはどうしてもそうは思えなくて……。もしあの話が本当なら、亮さんは私が質問した時に嘘を吐かずに認めたんじゃないかと思うんです。『話したくない』ということは、真実ではないんじゃないかなって」
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