たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
ずっと一緒に

「結婚式は十月に決まったから」

一体、何の話だろう。


休日デートの帰りに部長と一緒にいつものレストランに入ると、カウンター席には白川先生が座っていた。
ちょうど先生も来ていたんだなぁ、と思いながら、先生の左隣に部長、その左に私は腰をおろした。


先生はいつも通り明るくてにこにこしているけれど、今日は普段に増して元気が良いというか、機嫌が良さそうだ……と思っていたら、突然そんなセリフを言われたのだった。


部長は事情が分かっているみたいで「決まるの早かったな。良かったな」と返すけれど、私には何のことやらさっぱりだ。


「綾菜ちゃん、どうしたの?」と桜井さんがカウンター越しに声を掛けてくる。どうやら桜井さんも何の話かは分かっているみたいだ。


水を差すようで申し訳なかったけれど、私は素直に「ええと。誰と誰の結婚式ですか?」と尋ねてみる。
すると先生は、「何だ。亮から聞いて知ってると思ってたよー」と言って笑う。そして。


「智ちゃんと」と先生。
「薫くんの」と桜井さんが答える。


……はい?


回答をもらっても尚ぽかんとしている私に、部長が「だから、亮と智香が結婚するんだよ」と丁寧に教えてくれる。


ああ、なるほど。先生と桜井さんが……って……


「えぇぇ!?」


普段大きな声なんて出さないくせに、この店で大声をあげるのは何回目だろう。
< 63 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop