自由帳【番外編やおまけたち】

『今までのプリンターはボタンが少なかったから気になりませんでしたけど、モードを切り替える時はあたふたしちゃいます。タッチパネルは初めてで……』


私の言葉を聞いた佐々岡さんは、まるで残念な生き物でも見るような目つきになり、鼻で笑った。


『そんなの慣れだろ、慣れ』

『こっ……困ってることがあるか聞かれたから正直に答えたのに、何ですかそれ!』


物覚えが悪い様を思いっきり見せつけてしまったようで、羞恥から体温が急上昇する。さっきまでひとり舞い上がってしまっていたようで、恥ずかしい。会えて嬉しかったのは、どうやら私だけのようだ。

ムスッとした私に『子どもかよ』と笑いながら、ポケットから何かを取り出し差し出してきた。


『コールセンターに聞きづらいことがあったら、遠慮なくどうぞ。北村のことだから、聞くのは恥ずかしいとか言って自力で頑張って無駄な時間使ってそうだし』

『うっ……』


図星だ。
初日から意味が分からなすぎて何時間も説明書を読んでしまったことは、誰にも言っていないはずなのに!

差し出されたものに目線を落とすと、四角い紙が目に入った。佐々岡さんの勤める、スカイア株式会社の名刺だ。
丁度真ん中で白と黒が切り替わるようにデザインされており、スタイリッシュな印象を受ける。
その珍しくて格好いいデザインへの既視感に私ははあれ、と思い至る。出会った頃に一度、名刺を貰っていたことを思い出したからだ。
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