求めよ、さらば与えられん
違う。私は凄くなんかない。



『これは私の初恋なんです。 この国に来るまでは恋をする暇もなく自分の事でいっぱいで、でも恋をしていると気付いたらそれはそれでいっぱいいっぱいになっちゃって……グレース王女の存在に、私は醜い程の感情と焦りで、ただ自分の事を優先してしまったんです。 ジーン王子の怒りに触れるよりも、貴女に取られてしまう方が怖かったんです。 私__』



グレース王女の華奢ですらりとした指先が手の甲に触れた。その手は少しひんやりとしていた。



『感情をコントロール出来ないのが恋というものでしょう? わたくしは戦士としてのジーンに怯えを抱いてしまった。 咄嗟に本能が働いたの…怖い、とね……』

『…………』

『戦が始まるとジーンの顔つきは戦士になってしまう。 あの人の妻を望むのならば、戦士だろうと男だろうと関係なく、ジーンという1人の人間と対等に隣に並ばなければならないわ。 だってあの人はこの国の王となる人だから』



そうだ。ジーン王子はいずれはきっとこの国の王となる。だから正妃を持ち、側室を持つ……。私はそこまで考えられていなかった。



『貴女はジーンと同じくらいこの国を愛してる。 だからこそ、戦士であるジーンと対等に向き合いぶつかり合えるんだわ。 そして、女としても愛する人を取られまいと一生懸命になれる。 命をかけてまで相手の心を包み込もうとする。 わたくしには無理だわ。 今回の一件で気付かされたの』




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