【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「本来ならお返しする……返すなんて失礼な言い方ですけど、橘さんも元の鞘にもどりたいって言ってるんですけど、やっぱり私、あきらめきれなくて。こんなことするのも卑怯だってわかってます。でも橘さんと一緒に……いた……いんで、す……」
ただ、彼女がうらやましくもあった。まっすぐで潔い、というのか。私はそこまで橘さんを欲したことがあっただろうか。どうしても手に入れたい人間っていただろうか。
ひょっとして。そんな彼女に橘さんの心は動いたんじゃないだろうか。酔っていたかもしれない。ちょっと遊んでやれという男の野心も動いたかもしれない。でもそれは彼女に魅力があったからこそ、じゃないか……?
「頭を上げて。私、橘さんとよりをもどすつもりはないの」
「そ、そうですよね……浮気した恋人を許せないですよね」
「ううん。違う。橘さん、きっとあなたのこと、気に入ってると思う。それにね、私、好きな人がいるの。新しい恋をしてる。だから心配しないで」
「え……?」
「橘にも言っておく。自分について必要なひとはどっちなのかよく考えてね、って」
彼女は意味がわからなかったのか、きょとんとしていた。私は飲みかけのコーヒーもそのままに伝票をもって席を立った。