【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「好きで好きで……どうしても欲しくて。何度か告白もしました。もし、彼女さんと別れることがあったら私を選んでくださいって。忘年会の夜もそうでした。私は片思いが辛くて泣いてしまったんです。そしたら橘さん、手をつないでくれて。私、嬉しくてもっと泣いてしまって。しゃくりあげて吐きそうになってしまった私を介抱するのに橘さんは私の部屋に。そんな流れでした。誘ったのは私です。でも天罰がくだりましたね」


注文したコーヒーが届いて、彼女の言葉が一旦途切れた。橘さんの口振りでは橘さん自身が彼女を誘ったように聞こえた。でも、彼女の話からすると彼女が強引に橘さんを引きずりこんだようだ。

なぜ橘さんは彼女を庇うような言い方を?


「妊娠がわかって私、嬉しかったんです。これで橘さんとつき合えるって。でも赤ちゃんだけで橘さんの気持ちはつなぎ留められなくて。責任をとるって言いながらも私の方を向いてなかった。流産してよくわかりました。橘さん、やっぱり藍本さんを忘れてないって」
「3年もつきあったし。時間じゃないのかな」


私はいたたまれなくてコーヒーをすすった。寝取られた惨めさとは違う何かが私の中で大きくなる。


「こんなことを言うのは恥ずかしいって百も承知です。橘さんを譲ってください」
「え?」
< 119 / 237 >

この作品をシェア

pagetop