【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
翌日、月曜日。寝不足の体に鞭を打ち、出勤した。雅さんのことを忘れると決めていたのに、あんなデザイン画を見せられてしまったら。

辛くても、忘れる。あのドレスはただの幻。
シンデレラは所詮、空想の物語なのだ。一般庶民は一般庶民でしかない。私は雅さんとは不釣り合いなのだから。

両手で頬を叩いてオフィスに入る。
これからは会社の利益を一番に考えていこうと決めたのだ。でもそれは雅さんのことを思っての決断で。堂々巡りではあるけれど。

先に出勤していた武田さんが笑顔で声をかけてきた。


「おはようございます藍本さん。ちょっと風が変わりましたよ」


風? でも彼女の明るい表情から悪い方向ではないのはわかった。彼女に手招きされ、彼女の席にあるパソコンのモニターに目を向けた。

彼女に宛てられたメールの受信画面。
メールのタイトルにはテナント入居を希望する旨のものがずらりと並んでいた。発信元は国内で数店しか直売店のないチョコレート専門店や、週末には長蛇の列になる地方のマカロンの店。海外のブランド名もある。

もちろん、うれしい限りだ。うわあ、と私は年甲斐もなく悲鳴に近い声をあげた。


「こんなに?」
「週末になにがあったんでしょうね。一発逆転みたいな?」
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