【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
週末……。金曜日の夕方に私は雅さんと決別した。咲希さんの眠るソファの前で、最後のキスをして。橘さんと復縁すると言って別れた。あのときの怒った雅さんの顔と甘いキスが交互に蘇る。

表情を変えた私に気づいた武田さんが眉をひそめて私を見つめ、訝しむ。


「なに、武田さん」
「藍本さん、まさか」
「まさかって?」
「雅副社長と別れたんじゃないでしょうね? 雅副社長が藍本さんと別れて、二階堂オーナーの娘と婚約するように仕向けた、とか、ないですよね?? でも、二階堂オーナーの妨害工作がこんなに簡単にしかもスピーディーに解決するなんてそれ以外ありえないと思うんですけど?」


ギロリ、と睨まれ、唾を飲み込む。


「わ……別れたわよ」
「ダメって言ったじゃないですか」
「雅さんも承知したの」
「ええっ? なんで」
「しかたないね、って」
「そんなはずは……」


私たちの会話が聞こえたのか、ひとつとなりの課から話し声が聞こえた。「捨てられたんじゃないの?」「あっちはイマイチだったとか?」とか。イマイチって。そんなこと言われるほどしてません!と言いたいのをこらえて睨みつける。
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