【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
私はフォークを握りしめたままフリーズしていた。


「藍本さん、食べないとパスタかたまっちゃいますよ。それにもし唐澤くんと話をしたいならお昼休みの方がいいんじゃないですか?」
「あ……そうね……」


私は鞄からスマホを取り出し、唐澤さんにメールを打った。


*―*―*

ランチを口の中に掻き込んで、終日、秘書課にいるという唐澤さんを訪ねた。雅さんはどこか出かけているらしい……咲希さんを連れて。

誰もいないという雅副社長室に通され、ふたりだけの空間になる。
雅さんとならドキドキするシチュエーションだけど、唐澤さんだとほのぼのしてしまうのは彼のキャラからだろう。

いや、ほのぼのしている場合ではない。このひとを問い詰めないと。


「武田さんといとこって本当?」
「いとこ? はいっ、そうなんです! 母同士が姉妹で、月に一度は互いの家に顔出してます!」
「そう。そんな大事なことを隠してたのね」
「え、あ、なんですかっ! その般若みたいな怖い顔はっ!!」
「どうして教えてくれなかったの」
「それはですね、藍本さまが質問されなかったからお知らせしなかったと申しますか……え、え、なんですかっ! 身に覚えがごさいませんがっ!」
「ふうん? 心当たりはないの? 例えば私が酔いつぶれてタクシーで帰宅した夜、だれかさんに私を介抱するように仕向けた、とか?」
「えーっと……なんのことでこざいましょう……」
「オフィスの前でわざと大声で“雅副社長のフィアンセ”と呼んだりしたこととか? スイートルームを予約したとか?」
「いやあ、なんのことかさっぱり、この唐澤には……え、なんですか、顔が近いですよっ、あの……☆§●※▽■〇×?!」


唐澤さんは声にならない悲鳴を上げた。だって彼の足を思いっきり踏んづけてやったのだから。
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