【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
でもその理由を今、伝えてしまったら、決意が揺らいでしまう。


「言えないのか? なら質問を変える。タチバナとよりをもどさないのはなぜだ? 浮気された事実が辛いからか?」
「いえ、それはありません」
「じゃあなぜ」
「新しい彼女を思ったら私にはできませんでした。好きなひとの子を身ごもってなくして、相当ショックだと思うんです。その原因を作ったのは橘さんですし、ちゃんと見守ってあげるべきだと考えたので」


ずっと私を射抜くように見つめていた雅さんは視線を横にずらした。そして大きく息を吐いた。


「そうか。すまなかった」
「なにをですか?」
「キミに失望した、と言ってしまったことだ。傷ついた彼女を放っておける人間なら、俺の隣にはいてほしくかった。これから俺と社を背負って立つ妻にふさわしくないからな」
「つ……」


妻、という単語にドキドキする反面、とても重い責任を感じる。
雅さんと結婚するということはそういうことなんだ……。


「自分勝手な女だと勘違いした。すまない。許してくれるか?」
「許すもなにも、私が嘘を言ったことが原因ですし、謝らなくてはいけないのは私のほうですから。ごめんなさい……」


私は頭を下げた。その視界に雅さんの革靴と絨毯。そこに雅さんのゴツゴツした指先が割り込んでくる。

< 150 / 237 >

この作品をシェア

pagetop