【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「メーリングリストで流れてきたんです」


誰かが撮ってた、ってこと?


武田さんによると、雅副社長は独身の女性社員の憧れの的で、玉の輿をねらっている人は社内外問わずたくさんいる、とか。既に結婚されている女性からも目の保養として人気が高い、とか。上層部の奥様方や知り合いの年配のマダムたちにも可愛がられてアイドル歌手並に黄色い声があがるとか。

私には橘さんという恋人がいたから興味がなかったけれど、とにかく人気はあるらしい。事実かどうかは別として。

金持ち、御曹司、イケメン、長身……みてくれだけは確かに立派だ。でも中身は腰の軽い意地悪な男なのに。

世の女どもはだまされている!


「で、どうして藍本さんが副社長とデートなんですか?」
「デートじゃなくて……ちょっと頼まれごと」
「前からお知り合いでした?」
「え?」
「雅副社長と接点がなければ車に乗るどころか挨拶だってできないじゃないですか」


酔いつぶれてうずくまっているところを助けられてホテルのスイートルームに連れ込まれてやりました!、なんて言えるはずもない。彼にとっては勲章のひとつだろうけど、私には人生最大の汚点だ。


「ちょ、ちょっとね。ほら、この前の再開発事業で上層部に掛け合ってもらったことがあって」
「そんなことありましたっけ?」
「あったの。武田さんには話してなかったけど、その埋め合わせ」


ふうん、と納得のいかない顔で彼女は席にもどった。
そんなに噂になってるなんて。

私も席についてパソコンの電源を入れた。とりあえず昨日の分を取りもどさなくては。
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