【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「じゃあ早速、紬」
「うわーっ、もう呼び捨てですかあっ! 当てられましたぁっ!!」
「唐澤に先ほどのデータを送ってくれ。午後の役員会にはかる。時間がないが唐澤、まとめられるか?」
「かしこまりましたっ! この唐澤が全力でパワポにまとめさせていただきまっす!!!」


その場で唐澤さんとやり取りをし、データを唐澤さんのタブレットに送った。唐澤さんは私たちに一礼すると部屋を出て行った。嵐のように来て嵐のように去っていく。なんだか憎めない人だ。でも仕事は……できるんだろうか?


「ああ見えて仕事は速い。優秀な奴だよ」
「そうなんですか」
「キミ、考えてることダダ漏れだな」
「すみません」


今のデータを使って何をするんだろう。再開発の骨格はもうできあがっていて、あとはその駒を埋めるだけなのに。


「役員会で何か」
「あとで話すよ、ハニー」



じゃなかった紬、と言って、雅さんは私のこめかみにキスをした。


*―*―*

わが開発2課に激震が走ったのは定時5分前だった。急遽召集された部長クラスの会議から帰宅した部長たちが青ざめた顔でオフィスにもどってきた。

駅前再開発事業、一部変更。
商業施設誘致を白紙撤回。

オフィスにいた全員が総立ちになる。もうすでにめぼしい企業と詰めの段階まで来ていたのに、それがすべて水の泡になったということだ。

がたん、と脱力して椅子に座るもの。両手で頭を抱えるもの。それぞれだ。


「どういうことですか?」
「市と再協議をすることが決まった。それ以上のことは言えない」


部長たちも難しい表情で、互いに口をつぐんでいる。何が起きたのかはわからない。ただこの案件に関しては仕事を進められないので今日は定時で帰れというお達しのみが伝えられた。
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