【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔

「婚約者だからね、苗字で呼ぶのもおかしいだろう?」
「し、仕事中ですから」


っていうか、苗字ですら呼ばれた記憶はない。


「オフならいいのか? ならそうする」
「か、勝手にしてください」
「じゃあ勝手にする。紬?」
「だから今は仕事……」


大きな手で頬を包まれた。顔を傾けながら雅さんは近づける。

ちゅ。わずかに触れたキスで雅さんはわざと大きな音を立てた。


「仕事中だから我慢しないとな。口紅が落ちたら、ばれてしまう。口紅までは持ってきてないだろう?」
「……」
「もっとほしかった?」
「……」
「顔真っ赤だよ」


ノックする音が聞こえた。雅さんが返事をするとピピ、ピーとロックを解除され、背の高い若い男性が現れた。甲高く大きな声でしっつれいしまーすっ!!と腰を90度に折る。いきなりのハイテンションに私は構えた。

男は唐澤と名乗り、名刺の出した。肩書きは雅さんの秘書。ニコニコと庭を飛び跳ねる子犬のような笑顔を浮かべる。


「藍本紬さまですね! お話はお伺いしております! 何かありましたら、この唐澤に遠慮なくお申しつけください! 雅副社長の奥様になられるかたですので全力でサポートさせていただきますっ!!」


副社長の奥様……その言葉を確かめるべく雅さんの顔をうかがう。彼は唐澤さんに気付かれないようウインクして口の片方をあげた。私はとりあえずそれにあわせて、よろしくお願いします、と唐澤さんにお辞儀をした。
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