【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
唐澤さんは万年ひまわりの笑顔でボーイさながらにトレーを左手に乗せていた。慣れた手つきでローテーブルにカップを置いていく。


「雅副社長はブラックですねっ、藍本さまは?」
「わ、私もブラックで」
「さようでございますね! 次回からは砂糖クリームスプーン無しでお持ちしますっ。本日の豆はインドネシア産マンデリン・タノバタックです! 酸味が少なくクリーミーなコクがあり、ほどよい甘さが特徴ですっ。お代わりがほしいときはインターフォンでお知らせくださいませ。あなたのために秘書課で待機しておりますっ!」


直角のお辞儀をして唐澤さんは出て行った。気づかれなくてよかった。


「ああ見えて空気の読める奴だ」
「え?」
「本当は引っ越しの日取りをここで唐澤と決めるつもりだったんだが……」
「え……? ええっ!」


“ハニー、口紅がはみ出してる”、という雅さんの唇にも私のラメが光っていた。







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