極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~


 紘平が何か言いたがっている。
 

 あまりに優しく名前を呼ばれたので、勘違いしてしまいそうだった。
 
 けれどまた口を結び、そして息を吐き出す。



「……誰にでも、つまづく時はあるから」
「はい……」
 

 なんだ……。
 
 紘平は部長として、みのりのスランプを心配しているのだと悟った。
 
 一瞬でも期待してしまった自分が恥ずかしい。


「大丈夫、お前はまた飛べるよ」
 
 
 紘平の目じりが柔らかになる。
 
 種目の違う後輩のこともちゃんと気にかけてくれる。
 
 そんなところも彼らしいと思った。


「はい……ありがとうございます」



「何度でも立ち向かって、飛び越えていけ」
 

 紘平の声音は優しく、みのりの心に落ちてくる。
 
 みのりは深く頷いた。
 


 好きです、先輩。
 
 そして心の奥で囁いた。



「俺、篠田のハードル好きなんだ」
 

 紘平は肩を置いた手を、みのりの頭に移動させた。
 
 そしてそっと撫でてくれた。



「だから、また見せてくれ」

「はい……」
 

 目の奥から涙があふれた。
 
 頷きながら、もう充分だと思った。
 

 
 好きな人から、こんなに素敵な言葉をもらった。
 
 それだけで幸せだ。
 

 この言葉を胸に、私はきっとこれからも頑張れる。
 
 何があっても、飛び越えていける。




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