極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~







「篠田さん?」


 はっと我に返ると、司がみのりの顔を覗き込んでいた。


「どうしたの、ぼーっとして」

「いえ……何でもないです」
 
 
 一気に溢れだしたた過去の記憶。
 
 鍵をかけて、思い出として心の奥にしまっていた。
 

 けれど、その時の思いが鮮明によみがえる。
 

 結局告白できなかったけど、あの時の記憶を胸にずっとがんばってきた。

 私の心の中にはいつも先輩がいたんだ。 


 いつか忘れるものだと思っていた。
 
 けれどずっと、憧れは消えなかった。

 だから、こんなふうに再会してしまったら……。


 ようやくたどり着いた結論。


 やっぱり、自分は紘平のことを好きなのだと。


 そうなんだと、むしろ自分自身に安堵した。


 変わらずにあった思いを解放できて、なぜかほっとしている自分がいる。




「それで、昔から尊敬できる先輩、は今でも変わらず?」


 司は興味を持った顔で聞いてくる。

 恐らく、みのりの反応から、紘平に憧れていたことはもうとっくに見抜いているのだろう。
 
 それをわかって聞いてくる。
 
 軽い誘導尋問だとわかった。
 

 けれど。


「はい、変わりません」

 真っ直ぐに司を見て言った。
 


 それはまるで、紘平にするような。

 はっきりとした告白。


「……」


 そんな素直な瞳を見つめ、司は一瞬言葉を失う。
 

 けれどすぐに、いつもの柔らかで、どこか達観した笑みを浮かべた。


「いいね、篠田さんて」

「え?」



< 30 / 93 >

この作品をシェア

pagetop