極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
どんな会話をしていいかわからず、クーラーにそっとボトルを刺し入れると、
「篠田もどう」
グラスを持ち上げながら紘平が聞く。
「いえ、私は勤務中ですので」
「だよな、ちょっと言ってみただけだ」
グラスを持ち上げて紘平が小さく笑う。
冗談で、緊張を解そうとしてくれているのだとわかった。
「部下は夜に合流するから、飲む相手がいなくてな」
そういえば夜遅くにイン予定が何名かいたなと思い出した。
「ご一緒じゃないんですね」
「明日のプレゼンのアイディアにちょっと煮詰まってたから、気分転換に俺だけ早めに来たんだ」
ホテルスイートで少し気分を変えれば、アイディアも浮かぶということだろうか。
そんなところはとても彼らしいと思った。
「どんな商品のプレゼンなんですか?」
「新しい清涼飲料水の広告なんだ、CM企画と、ウェブサイトのデザイン、広告全般のアイディアを依頼されている」
「盛りだくさんですね、間に合いそうなんですか?」
「大丈夫だろ。だいたいは詰めてある。あと一押しの何かが欲しいんだけどな」
焦る様子は全くない。勝つ自信はもう既にあるようだ。
陸上の大会の彼も、本番中によくこんな寛ぎかたをしていたのを思い出す。
自分のジャンプのターンが来るまで、フィールドの隅で自由に横になったり音楽を聞く姿は有名だった。
その時が来るとぱっと集中できる選手。
こういう大胆で自由な所が、彼を社長業に押し上げたのだろうと思った。
「ご活躍されているんですね」
「そうかな、まぁ、ありがたいことに忙しくしてる。周りの人間と部下に恵まれたおかげだな」
紘平がグラスを置いたタイミングを見て、シャンパンを足す。
シャンパンを飲む彼はとても大人っぽくなった。魅力も増した。
それはみのりが想像していた社会人になった紘平そのものだった。
まさかまた彼と出会い、こんな素敵な姿を見られるなんて。
「篠田も、頑張ってるんだな」
話を振られ、少し手が震えた。
「フロントで見た時、びっくりした」
「そうですか?」
「ああ、見違えた」