俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
その一連の様子を茫然と眺めていると、田中さんに肩を叩かれハッとする。


「ありがとうございました。代表のお仕事が終わるまでどうぞこちらでお待ちください。なにか温かい飲み物をご用意いたしますので」

「え、あ……」

そう言うとまるで忍者かのように、足音ひとつ立てずに代表室を後にする田中さん。

私もできるだけ足音を立てずにそっと代表室を後にした。

最後にドアを閉める時、デスクワークに励む和臣さんの真剣な姿を目に焼きつけて。

やっぱり和臣さんの仕事に打ち込む姿、好きだな。


感情的になるあまり、さっきのような言動にびっくりしちゃうときもあるけど、田中さんの嘘をあっさり信じちゃう単純なところも、母性本能をくすぶられるというか……。

つまりはどんな和臣さんでも、好きってことだよね。

自己完結して満足していると、給湯室から田中さんが戻ってきた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

彼は素早く珈琲を淹れてくれた。

それを秘書室で頂いていると、田中さんは自分のデスクで仕事をしながら聞いてきた。
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