俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「不躾なご質問とは思いますが、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「は、はい……!」

彼の淹れてくれた珈琲を飲みながらホッと一息ついた時、ふと投げ掛けられた質問。


改まって言われると変に緊張する。それは完璧人間の田中さんに『不躾な』なんて前置きされたから余計かもしれない。

ドキドキしながら彼を見据えると、田中さんは仕事を続けたまま言った。

「一生寄り添うことになる相手が、あの代表で大川さんは本当によろしいのですか?」

「…………へ?」

随分と間抜けな声が漏れてしまった。

だってまさか田中さんにそんなことを聞かれるとは、夢にも思わないじゃない?

けれど田中さんにとっては至って真面目な質問だったようで、顔を上げ私をジッと見つめてきた。

「あ……えっと、もちろんです! 代表以外いないと思っています!」

慌てて彼の質問に答えると、眼鏡の奥に見える瞳は大きく見開いた。

「そう、ですか。……代表以外いらっしゃらないですか」

感慨深そうに私の答えを復唱し、小さく何度も頷く田中さん。
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