俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「心配しすぎでしたか。……それは大変失礼しました」

丁寧に頭を下げる田中さんに、すぐに手を横に振る。

「そんなっ……! むしろ私なんかのことを気にかけてくださり、ありがとうございました」

私もまた頭を下げると、彼は珍しく眼鏡の奥に見える目を細めた。


「先ほども申しましたが、大川さんは代表のご婚約者である前に、同じ会社に勤める大切な同僚です。……もし今後、なにかお困りごとがございましたら、いつでもお声掛けください」

「……ありがとうございます」

やっぱり田中さんはみんなが恐れているような人ではない。

優しくて気遣いできて、素敵な人だ。だからきっと和臣さんも田中さんを秘書につけたんだよね? 昔から今もずっと――。

それから和臣さんの仕事が終わるまで、田中さんは和臣さんの昔の話を聞かせてくれた。
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