繋いだ歌【完結】

だけど、これは違う。
聞いている人の反応を間近で感じてしまう。

こういう時、観客ってシビアだ。
興味がなくなればすぐに客席を立って離れてしまう。


田所は感動したと言ってくれたけど、僕の動画の再生回数は芳しくなかった。


それでも、僕には関係なかった。
溢れ出る音楽を記録として残せる場所。それだけでよかった。


体育館のステージ脇で前の人の演奏が終わるのを待っていた。
僕の演奏する時間になり、ステージへと上がる。

好奇の目で皆僕を見ていた。


ギター片手に何を演奏するのだろう。
そんな風に問いかけられている気がした。


「えーっと、初めまして。僕は三年エー組の来栖と言います。
自作の曲を数曲披露します。聞いてください」


ざわざわとなる体育館。
オリジナル? えー知っている曲じゃないんだ。じゃあ、帰ろうよ。
そんな声が聞こえる。だけど、そんなのは想定内だ。


誰か一人が聞いているならそれでいい。


すうっと息を吸い込むと僕は歌い出した。


全て歌い終わった後、僕はぺこりと頭を下げる。
観客は減っていなかった。寧ろ、増えていた。
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